北山物語 第二話 -歩き始めた北山水産-
大正元年のある日。現会長である三井芳治(78)の祖父・三井栄吉は、長く家業であった農業に加えて、新たに水産物を商うことを思いつきました。 この時こそが、現在に続く北山水産が誕生した瞬間でした。
豊かな現代社会と違い、まだ日本中に物が無かった時代のこと。当初の栄吉の仕事は水産加工というにはあまりに慎ましい、日々の生活に根ざした仕事でした。
当然、現在のような会社組織としてではなく、漁がある日は木船が伊勢湾を巡って集めた小魚を天日干しにし、そうでない日は畑仕事に精を出すという半農半漁の生活でした。
当時の漁師町の人々の多くがそうであったように、浜で沖から帰ってくる船を待ち、様々な小魚を浜で天日干しや煮干しにして日々の糧としたのです。 当社の「北山」の屋号は、創業家である三井家の在所が、地域の北方にあった小高い丘の上だったことに由来しています。
水産加工を行う前から、地域で「北山さん」と呼ばれていた三井家は、やがて軌道に乗った海の仕事にも、北山の屋号を冠したのでした。
続く…北山物語 第三話 -賑わいを増す海の商い-
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